こんにちは!ウチの部屋へようこそ!
今回は手塚治虫のライフワークと呼ばれる作品、火の鳥の第2編「未来編」についてお話していきたいと思います!
この作品にもまた個性豊かな登場人物、あっと驚く物語の展開、とんでもない時間の果ての結末など、盛り沢山の内容です。
あらすじを追った後にこの作品から僕が受け取ったメッセージについての考察を、感想を交えつつお話していきたいと思います。
それでは、火の鳥 未来編のあらすじを解説!全12編読破した僕の考察と感想!
行ってみましょう!
火の鳥 未来編で描かれる未来の人類の姿とは?
時は3034年、全人類は生活のあらゆる決定ををコンピューターに委ね、指示にのみ従うよう管理されています。
地球規模でその環境の維持だけに腐心し、文化的には発展し続けるのではなくむしろ後退が始まったいわゆるデカダン主義の時代です。
主人公は山野辺マサトという人類戦士のメンバーの一人です。
いわばこの時代のエリートとも言える職業ですが、秘密を抱えていました。
この世界で絶対権力を持つコンピューターで禁止されている動物を飼育していたのです。
コンピューターに全てを委ねた世界
マサトが飼育していたのはムーピーと呼ばれる不定形生命体です。
ムーピーはあらゆる生物へと変身し、その種族と意思の疎通が可能です。
更にもう一つ特殊能力を持ちます。相手との意思疎通な能力を使い、ムーピー個体から放たれる特殊な超音波でイメージを相手へと送り共有することです。
つまり相手へと幻想を見せることが出来るのです。
これをムーピーゲームと言い、催眠術のようなもので今でいうバーチャルリアリティーというところでしょうが、一歩間違えると習慣性を伴い中毒となり、人間を堕落させ無気力にさせる危険を孕んでいることから、コンピューターはムーピー狩りを行い全滅させたはずでした。
マサトがムーピーを手に入れるいきさつは本編では触れられていませんが、おそらく人類戦士として不法にムーピーを飼っている者を逮捕した際に…というところではないでしょうか?
この2つの能力ゆえに不法ながら非常に貴重な種とされています。
マサトとムーピーのタマミの関係
夜な夜なマサトは、人間に変身したムーピーをタマミと名付け、ムーピーゲームに耽るようになります。それはもはや麻薬のように作用し、ムーピーに恋をするまでになってしまいます。
しかし、それが人類戦士の上役であるロックに発覚してしまい、マサトはタマミを殺すよう命令されます。
しかし、いざタマミを目の前にして命令を実行できないマサトは、この都市から脱出し、別のメガロポリスへの亡命を試みます。
自由意志と欲望を放棄した人類
35世紀の人類はどんどん退化、老化し無気力になっていきました。どうしていいか分からなくなった人類は、全ての決定をを電子頭脳に委ねるようになったのです。
人々は自らの毎食食べるものさえコンピューターに指示され、それに従うのが当たり前となっています。
人間が自分の意思であれがしたい、これが欲しいといった欲望が排除され徹底的にコンピューターに管理されています。
マサトたちの住む都市はメガロポリスと呼ばれ、世界に5つ存在します。
地上は直前の戦争の影響で寒冷化してしまい不毛の地になっています。そのため5つのメガロポリスはいずれも地下に建設されています。
そして、マザーコンピューターが全ての指示を出し、従わないものは人類戦士が取り締まるという究極の管理社会です。
この為人類は、コンピューター管理され生きながら死んでいるかのような状態です。
未来の人類の辿る運命は?
メガロポリスのマザーコンピューター同士が直接交信し、マサトの身柄のことで意見が食い違ったため、何と相手と戦争することを決定してしまいます。
全ての決定権を電子頭脳に渡してしまった人類は、この決定に従うしかなく…とは言え高度に発達した兵器を持つはるかな未来では、コンピューターが核の攻撃を決定するだけで全てが灰となってしまうのです。この戦火は残る3つのメガロポリスにも飛び火し、結局5つのメガロポリスは一瞬で滅びてしまう…というのが未来編の冒頭部です。
ここまでの考察
手塚治虫の慧眼と申しますか、人類の未来をまるで生き証人のごとく目の当たりにしてきたかのように的確で説得力ある展開です。
確かに過去の歴史を紐解くと懐古主義がもてはやされた時代もあり、それでも人類は未来へと向かって進歩、発展を続けています。しかし、どこかでもう飽和し始めていることもうすうす感じています。
この時代の機微を掬い取り作品で表現しているのですから、まさしく芸術家と呼ぶに相応しいでしょう。
また手塚治虫は宇宙生命(コスモゾーン)という概念で、このシリーズを進めていきます。
細胞のように極小のものから、例えば銀河系のような極大のものまで、全てが宇宙生命で出来ていると狂言回しである火の鳥の言葉を借りて述べています。
これは「ブッダ」でも同様に表現を用いていることから、これは手塚治虫自身の死生観を表現していると考えられます。
そして人類の退化を「宇宙生命の地球が病気にかかった」と表現しています。
そして病気の地球を治せるのはただ一人、マサトしかいないと火の鳥は告げるのです。
火の鳥 未来編で描かれる将来の地球の姿
亡命しようと隣のメガロポリスを目指していたマサトとタマミは、地上で行倒れそうになっているところを、火の鳥の導きでとある観測所までたどり着きます。
そこには科学者で世捨て人でもある猿田博士が、生命の研究をしながら細々と生きているのでした。
観測所に二人がたどり着いて間もなく、メガロポリスの追手を退けるとメガロポリス同士がお互いに核攻撃を行い、人類は滅びてしまいます。
地球の病気が発覚し、進行していくように呆気なくメガロポリスは無くなり、人類の生き残りはマサト、猿田博士、マサトを追ってきたロック、そしてムーピーのタマミだけになってしまいます。
この時突如火の鳥が観測所に現れ、マサトの心に語り掛けます。
火の鳥がマサトに与えたものは?
マサトは火の鳥に導かれるまま、宇宙生命の極小の世界、極大の世界を一緒に巡りますがそこには似たような光景が展開され、およそ人智の及ばないところです。
そののち、火の鳥はマサトに不死の力を与えます。
火の鳥の作品中でほぼ唯一、不死の力を得たのがこのマサトです。
物語では、核戦争が起きて間もなく大きな地震が起きます。
そのため観測所に亀裂が生じ外気から放射能が入り込んでしまい、マサトを除いて全員死んでしまいます。
ただ一人生き残ったマサトはタマミに似せたロボットを沢山作りましたが、それは結局のところ独りぼっちになってしまった自分を慰める相手が欲しかったからでした。
ロボットを何体作ってもどれもうまくいかず寂しさは募るばかりです。
夢の中に火の鳥が現れマサトに新しい生命を生み出すように促します。
そこでマサトは人工生命を作るものの再び大きな地震が起き、人工生物はあえなく全滅してしまいます。
生物の誕生を見守るマサトと地球の新たな支配者とは?
今まで行動していたのは、自分の寂しさを埋めるためだったことに気付いたマサトは、違う方法を試します。
それは生命の生まれる過程をもう一度最初からやり直すことでした。
この時、劇中ではメガロポリス滅亡から実に1万数千年が経っているのですが、この先の進化の歴史はそれとは比べ物にならないほど、膨大な年月が必要なのでした
老化した肉体は滅んでいましたが、それでもマサトは生きていました。
小さな細胞から魚類、爬虫類、両生類と進化の過程を追うごとに恐竜が現れますが、ここで狂いが生じます。
なんと、恐竜にとってかわったのはナメクジでした。
ナメクジは進化を遂げ言葉を獲得し文明を築きます。
しかしナメクジ同士が争い合い、滅びてしまいます。
再び誕生する人類とマサトの帰還
ナメクジ文明がすっかり滅びた頃、いよいよ地球に哺乳類が現れます。哺乳類からサル、類人猿と進化を続け、再び人間が地球に現れます。
しかし、マサトにとってはようやく誕生したこの人類も、自分の創造しようとした「あたらしい人間」ではなかったのです。
このままではきっと以前のように核戦争による同士討ちで滅びてしまうだろうと、山の頂上から人間の姿を見て独り言ちていました。
そこに火の鳥が現れます。マサトに新しい命を創造してほしい、と頼んでから実に30億年ぶりの再会です。
火の鳥は自分と一つになるように、自分の中に飛び込んでくるようにマサトに呼びかけます。
火の鳥は無数の宇宙生命で満たされており、その中にはタマミだった宇宙生命が待っていました。
二つの宇宙生命は混じり合い、一つになって火の鳥の中に吸い込まれていくのでした。
再び火の鳥は新たな人類の誕生を待ちわび、地球を見守る旅に出る…というところでこの未来編は完結します。
火の鳥 未来編を読んだ僕の考察と感想
ここからは僕が「火の鳥 未来編」を読んで考察したことを、感想を交えてお伝えしたいと思います。
あくまで僕の独断と主観ですので、これをきっかけに「火の鳥 未来編」やほかの火の鳥作品、あるいは手塚作品に興味を持ってもらえたら幸いです。
人類は誕生してから1分?
ここまであらすじを追ってきましたが、人類が滅びまた創造されるまで実に30億年…
人類の直接の祖先と言われるホモサピエンスが誕生してから25万年ほどだそうです。
30億年を24時間に換算してみると、25万年はわずか72秒です。
つまり例えると、生命の起源が0時から始まったとすれば、人類が誕生したのは23時58分48秒だということです。
人類は、たかだか1分そこそこの歴史ということになりますね。
火の鳥は「30億年の一日」を何度も何度もループしているのでしょう。
マサトはその一日をちょっとお手伝いしただけ…と考えるとものすごいスケールで火の鳥という作品が展開されていることになります。
間に入ってきたナメクジ文明は、おそらく数秒にも満たないスケールでしょう。
ナメクジは何の暗喩?
今回の人類発祥の過程でナメクジの文明が現れましたが、物理的や時間的にスケールは小さいものの、核戦争で滅びてしまった5つのメガロポリスと大きく変わることは無いと感じます。
お互いのいがみ合いでナメクジ同士は相争い、自らを滅ぼしてしまいます。
ですが火の鳥の目線から見たら、先の人類と何ら変わることは無く、誤った生命の使い方をしてしまったという意味では共通の存在です。
逆に命の重さは人間もナメクジも変わらない…とはさすがに言い過ぎでしょうが、生命を粗末に扱うものはナメクジ並みだ、という手塚先生の暗喩が入っているように感じます。
また最後のナメクジは「進化した為に楽に死ぬことが出来なかった」というセリフを残して死にます。
進化し文明をもった以上、それを正しく見つめ生命を正しく使う責任があるのだ、という手塚先生のメッセージのようにも感じます。
宇宙生命(コスモゾーン)とは一体何なのか?
物語のクライマックスで、火の鳥とマサトは一つになります。
これはマサトが人類滅亡後に火の鳥から永遠の命を分け与えられた時、すでに宇宙生命の力を持っていたという示唆ではないでしょうか。
また、火の鳥の中には何十億もの宇宙生命がひしめいています。火の鳥は「生命はこの宇宙生命が飛び込んで初めて生まれる」と言います。
その集合体であり悠久の時を生きる存在…仮に神というものがいるとしたらこういった存在ではないかと思います。
そして人類の誕生までを見守ったマサトは火の鳥の一部となり、また新たな生命の源となるとしたならば、マサトの魂は輪廻転生を繰り返していることになります。
つまり宇宙生命は魂の輪廻であり、肉体は滅びても魂はまた別の生命として滅ぶことは無いというメッセージではないでしょうか。
その意味では、人間もナメクジも変わらないのかもしれません。
火の鳥 未来編のあらすじと解説について:まとめ
この「火の鳥 未来編」で
- 生命とは生きているだけで素晴らしく、価値がある存在である
- しかし、その価値におごらずに正しく生命を使わなくてはいけない
- 人類にはその責任があるのだ
このようなテーマを持って、手塚先生はこの作品を描かれたのではないでしょうか。
あらすじを追うと、核戦争による飽和した文明をもった人類の滅亡、ナメクジ文明の勃興と衰退、新しく生まれながらもまた間違ってしまいそうな人類とそれを見守ったマサト。
この一連の出来事から僕はこのようなことを受け取りました。
よろしければこの作品「火の鳥 未来編」を実際に手に取っていただいて、ご一読されてみてはいかがでしょうか?
今回は火の鳥 未来編のあらすじを解説!全12編読破した僕の考察と感想!と題してお話させていただきました。
ここまでお読みいただきありがとうございました。